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大植物図鑑
だいしょくぶつずかん
副題01 序
01 じょ
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「大植物圖鑑」 大植物圖鑑刊行會【近代デジタルライブラリー利用】
1925(大正14)年9月25日
入力者蒋龍
校正者フクポー
公開 / 更新2018-01-09 / 2017-12-26
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 近來科學知識が一般に歡迎せられつゝあるは喜ぶ可き現象である。併し科學の範圍は廣いから、その總べてに亘る知識を何人もが得ようとすることは、それが各專門の知識であるだけに困難な業である。それで何人にも興味があり、直接必要な知識として歡迎せらるゝは自然科學、殊に動物及び植物に關する知識である。この方面の知識は婦人にも子供にも歡迎せられて、頻りに一般家庭に取入れられつゝある。
 一括して動植物といつても、其處には無限に廣い領野があるから、一通りでもこれを知らうとするは容易でないが、直接日常生活に關係のあるものだけでも知り置くことの便利なるは言ふ迄もない。殊にその中でも植物一般は人間の生活に最も密接な交渉があるから、何人もその方面の知識を多く蓄へて居て生活上に活用することが肝要である。此に於て人々に廣く植物に關する知識を得させるに良き手引となる案内書の必要が生ずる。それには植物圖鑑の如く直接有らゆる植物に親しませるに最も都合よきものを欲しい。然るに從來植物圖鑑も二三あるが、或は簡略に過ぎたり、材料の選擇が適當でなかつたり、往々研究の結果が如何かと思はれたりして、未だ十分吾人の意を充たすに足るものが尠い。これは一般に有用な植物の知識を普及する上に甚だ遺憾のことであつた。そこへ今回村越三千男君の大植物圖鑑が現れて、吾人の從來遺憾とし來つたものが之に依つて略々充たされた觀がある。
 余は當初村越君持參の本書を巨細に見た結果、その内容の充實せるに尠からず滿足を覺えたのであつた。今、余の眼に映じた本書の長所を列擧すれば、分類の整然たること、描畫の精密にして要を得てゐること、説明の懇切にして明快なること、材料の豐富にして遺漏なきこと、索引の至便なること等を數へることが出來る。從來世に出てゐる植物圖鑑には多く本書の著者村越君が關係してゐた樣であるが、未だ種々の點に於て不備なるを免れなかつた。併しそれも最後に本書を作り上げるための準備行爲だつたとすれば、それ等に完成を望むことは無理かも知れぬ。然るに本書は植物圖鑑として稀なる大著であるばかりでなく、總べての點から見て甚だよく整つてゐるので一般には勿論、專門家にも有用なものであらうと思ふ。
 余は以上の理由に因り大植物圖鑑の刊行を學界のために祝し、喜んでこれを江湖に推獎せんとするものである。

大正十四年九月

松村任三識



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