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大植物図鑑
だいしょくぶつずかん
作品ID52316
副題02 序
02 じょ
著者丹波 敬三
文字遣い旧字旧仮名
底本 「大植物圖鑑」 大植物圖鑑刊行會【近代デジタルライブラリー利用】
1925(大正14)年9月25日
入力者蒋龍
校正者フクポー
公開 / 更新2018-01-28 / 2017-12-26
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 自然界に棲息する人間に取つて、自然の觀察は決して忽にならない。中にも人間の生活を取卷く植物ほど人生に深い交渉を有つものはあるまい。
 吾人は全然知らぬ自然界の事物に對するよりも、よく其の物の名稱を知り形状を知るときに、そこに心から其の物を愛する情が起る。故に草木の如きもその名稱・形態より延いて生活状態までも知るやうになれば、到底離るべからざる愛着心を感ずる。本書著述の最高の目的は亦讀者を其處に導くことに在ると思ふ。
 本書の著述に對し、著者が最も苦心されたであらうと認められる所は、各植物につき利用厚生の方面を詳説されたこと、及び本書全體に亘り圖版の極めて多數なることである。恐らく今後と雖も斯く迄圖版の多數なるものは容易に得難いことであらう。これ等は從來斯の種の著書に對し、斯學研究者の甚だ不滿とした所を補ふに充分であると思ふ。
 藥用植物の項についても、圖版並に説明が多方面に載録してあることは余の意を得たる所である。且つその説明も日本藥局方によるもの、和漢方に使用するもの、一般民間藥として慣用し來りたるものを區別し、これ等植物については其の性状のみならず、藥効、取扱ひ方、使用方等に就いての注意等をも記述したるは、本書がどこまでも讀者に對して親切なる點である。又卷末の各種索引の如きも著述の苦心を明に語るもので、別して推奬せんとする所である。
 村越君は本書を成すために十數年の長年月と多くの犧牲を拂はれたというて居るが、それは元より然あるべきことゝ思ふ。かゝる大部の著述を描畫から解説明まで、君一人の手に依つてなされたといふは、誠に異數であると言はねばならない。
 終りに一言したいのは君のこの創業的著述に對し完壁を[#「完壁を」はママ]望むは聊か望むものゝ無理であるが、君は其の最も至難なる基礎的工事を此處迄築き上げたのであるから、單にこの點のみよりしても其の努力と功績とは十分に認めねばならない。殊に君は今後廣く各方面の批評に聽き、永遠に本書の完備を期するの意氣を以て立たれて居るから、本書は斯學研究上、永久に貴重なる著書となることゝ信ずる。
 余は本書が大なる努力に成れる近來の好著として學界及び一般より歡迎せらるゝことを確信するものである。

大正十四年九月

丹波敬三識



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