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アルカプトン尿の発現
アルカプトンにょうのはつげん
作品ID52357
副題化学的個人差の研究
かがくてきこじんさのけんきゅう
著者ギャロッド アーチボルド
翻訳者水上 茂樹
文字遣い新字新仮名
入力者
校正者Juki
公開 / 更新2011-01-14 / 2019-04-01
長さの目安約 35 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

アーチボルド・ギャロッド MAオクスフォード大学MD
グレート・オーモンド街小児病院医師、聖バーソロミュー病院化学病理学・実地授業助手
ランセット誌 pp.1616-1620(1902)より

 アルカプトン尿症についての最近の研究は、この病態で不変な特性はホモゲンチジン酸(*2,5−ジヒドロキシフェニル酢酸)の排泄であり、アルカプトン(*アルカリ+掴まえる)尿の特別な性質、すなわちアルカリが存在し空気があると暗黒色になり、布を深く染め、金属塩を還元する能力を持つことは、等しくこの物質の存在によることが示されるようになっている。Wolkow and Baumann[1]が最初にこの酸を単離し記載した後では、充分に研究されたすべての例においてこの物質の存在が示され、以前の症例から得られた物質を再検査するとこれが見出された。これと似た第2のアルカプトン酸であるウロロイシン(*尿+白い)はこれまでのところ Kirk が研究した例にだけ大量のホモゲンチジン酸に伴って見つかっている[2]。R. Kirk 博士の好意によって私は最近になり今では成人した彼の患者たちの新鮮な試料を検査する機会を得て、現在ではこの患者たちですらウロロイシン酸を排泄していないことを見て満足した。ホモゲンチジン酸を鉛塩としてできるだけ分離した後で少量のアルカプトン酸の残差を最近 Erich Meyer[3]が記載した方法でエチルエステルにして得た結晶性の産物はエチルホモゲンチジン酸の融点(120℃)に一致した。さらにその後の観察、とくに Mittelbach[4]の観察は、排泄されたホモゲンチジン酸がチロシンから誘導されたものであるという信念を強くした。しかしアルカプトン尿者がチロシンのベンゼン環を分解しないで排泄するのは何故か、チロシンからホモゲンチジン酸への奇妙な化学変化がどこで起きるのかは、解明されていない問題である。
 アルカプトン尿症は病気の発現ではなく、むしろ害がなく普通は先天的であって一生続く代謝の別経路の性格を持つものである、と考えることの正しい理由がある。この異常は起きても健康にはっきりとした障害を与えず、成人になりさらに高齢になっても無害であることが証明されている。これらの人たちが普通に排泄しているホモゲンチジン酸は、芳香族性の毒物として解毒されて芳香族硫酸エステルになったり尿中で中和のためにアンモニアの余計な排泄を伴わないことを Erich Meyer の観察が示しているように、芳香族としての毒性を示さないし酸中毒の原因になっていないからである。しかし代謝の別経路とみなすとアルカプトン尿者は普通の経路にくらべると幾らか劣っていると見なすべきであろう。普通の最終産物にくらべるとホモゲンチジン酸の排泄はあるていど潜在エネルギーを無駄にするからである。この点について我々が知る限り…

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