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先天性代謝異常
せんてんせいたいしゃいじょう |
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作品ID | 52527 |
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原題 | INBORN ERRORS OF METABOLISM |
著者 | ギャロッド アーチボルド Ⓦ |
翻訳者 | 水上 茂樹 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
入力者 | |
校正者 | Juki |
公開 / 更新 | 2011-02-02 / 2019-03-25 |
長さの目安 | 約 76 ページ(500字/頁で計算) |
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第1章 先天性代謝異常
動物や植物の属や種を区別するのに役立つ構造や形の違いは、自然における最も明白な事実である。これらを見つけるには科学の訓練を必要とせず、教育ていどが低い知能の人であっても気がつかないことはない。しかし知識が増えるとともにこの見かけ上の違いおよび形から形への発生的な関係の基礎に、均一性のあることを学ぶ。生体組織の化学的成分およびこれらの組織が作られ壊される代謝過程に関しては、進展が逆方向である。何故かと言うと、表面的な均一性の後ろに、見かけ上は明らかではないが形態よりもずっと実際的な違いのあることを、化学生理学の発展は我々に教えているからである。
異なる属の動物でヘモグロビンの究極的な成分および結晶形に違いのあることは古くから知られていた。もっとも明白な例の幾つかをあげるとすると、動物の脂肪の成分が同じようでないことはよく知られているし、胆汁酸の違いも同様である。代謝の最終産物が異なる例としてキヌレニン酸をあげることができる。これは犬族の尿に存在するものであって、タンパク質のトリプトファン部分を取り扱う方法が属によって違っていることを示している。鳥や爬虫類は廃棄する窒素の大量を尿酸として排泄するのに対して、哺乳動物の尿の窒素構成分の大部分は尿素である。
厳密に化学的な方法によってももっと広範に研究すると Przibram(1)が筋タンパク質について前駆的な研究を行ったように数えきれないほどの小さい違いが示されるであろう。最近の研究者たちが開発した沈降素法のような超化学的な方法はもっと細かい違いを明らかにし、個々の種に属するものはそれぞれ特異的なタンパク質からなり、それらは種の関係が密接であればあるだけ互いに似ていることを教えている。
このような特異的な違いは分解によって得られる単純な最終産物よりは、明らかに高度に複雑なタンパク質に見られるものである。タンパク質分子の構造の中に入っている多くのアミノ酸は殆ど数えることができないグループを作り割合をしていて、それぞれの新しいグループは異なったタンパク質を形成する。しかし分解するとすべて似ていて尿素と二酸化炭素のように同じ単純な最終産物を与えるであろう。
化学的な構造および過程の多様性は種の境界によって限られてはいないし、実際に終点が無い境界の中で均一性が支配しているのではない。このような均一性の概念は自然および種の起源の進化論的の概念と矛盾する。化学的な個性の存在は当然のところ化学的特異性に従うものであるが、個体の間の違いはもっと細かくて、検出は困難なことを知るべきである。これらの存在は人においても皮膚や毛や眼の色について、内的なものであって最近の研究に示されるように食べ物によっては影響されないような代謝最終産物の量的な違いに見ることができる。ある人にとっての肉は他の人にとって毒であ…