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頭をはなれた帽子
あたまをはなれたぼうし
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 6」 講談社
1977(昭和52)年4月10日
「未明童話集4」 丸善
1930(昭和5)年7月20日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者くろべえ
公開 / 更新2021-02-08 / 2021-01-27
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 三郎は、往来で、犬と遊んでいるうちに、ふいに、自分のかぶっていた帽子をとって、これを犬の頭にかぶせました。
 ポチは、目が見えなくなったので、びっくりして、あとずさりをしました。それに、坊ちゃんの大事な帽子をよごしたり、いためたりしては、わるいと思ったので、遠慮するように見えたのであります。
「ポチ、帽子をかぶって、歩くんだよ。」と、三郎は、いいました。
「私は、帽子はいりません。」と、答えるように、ポチは、尾をぴちぴちと振って、帽子を頭の上から落としました。
 三郎は、いやがるポチの後を追いかけて、こんどは、無理に帽子を頭からかぶせて、
「おまえに、この帽子をやるよ。」といいました。
 すると、こんどは、ポチは、喜んで、もうだれにも遠慮もないと思ったごとく、帽子をくわえて、飛び上がりながら、駆け出しました。
「おまち、ポチ、おまち。」といって、三郎はその後を追いましたけれど、ポチは、さっさと、帽子をくわえてどこへかいってしまいました。
 三郎は、後悔しましたけれど、しかたがありません。ポチは坊ちゃんから、帽子をもらって、うれしくて、身の置きどころがないように、方々へ帽子をくわえて駆けまわっていました。
 しかし、いくらうれしくても、犬には、帽子の必要がなかったのでした。こうして、帽子をくわえて遊んでいるうちに、ふと、ポチは野ねずみかなにかを見つけました。彼は、帽子を口から放すと、こんどは、野ねずみを捕らえようとして、追いかけました。
 野ねずみは、よっぽど犬よりりこうで、すばしこかったので、小さな体を木株のあたりに潜めたかと思うと、もう、姿は、見えなくなってしまいました。
「あいつ、どこへ隠れたろう。」と、ポチは、あちらの木の下や、こちらの草の根を分けて捜していましたが、ついに見つからないので、あきらめてつまらなそうな顔つきをして、お家を思い出して帰っていったのです。
 道のかたわらに、小学生のかぶる帽子が、捨てられて落ちていました。そこへ、帽子を持たない工夫が通りかかって、その帽子を見つけました。
「こんなところに、子供の帽子が落ちている。友だちどうしでけんかでもして捨てたのかな。」といって、拾い上げました。
「子供のでは、俺の頭に合うまい。」と、いいながら、自分の頭にのせてみました。すると、帽子は、頭の半分ほどはいったのです。工夫は、子供の帽子をかぶって道を歩いたのでした。
 工夫は、野原の中に立っている、電信柱の上で仕事をしていました。故障のある箇所を修繕したのです。しかし、下を向くと、ちょっと頭にかかっている帽子が、なんだか落ちそうな気がして、気にかかったので、彼は、頭から帽子を取って、電信柱のいただきにかぶせておいたのです。
 彼は、たばこをのみたいと思ったけれど、我慢をしていました。そのうちに、仕事が終わったので、工夫はいそいで降りて、たばこ…

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