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美しく生まれたばかりに
うつくしくうまれたばかりに
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 6」 講談社
1977(昭和52)年4月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者栗田美恵子
公開 / 更新2019-10-29 / 2019-09-27
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 さびしい、暗い、谷を前にひかえて、こんもりとした森がありました。そこには、いろいろな小鳥が、よく集まってきました。
 秋から、冬へかけて、そのあたりは、いっそうさびしくなりました。森は陰気な顔をして、黙っていました。そのとき、眠りをさまさせるように、いい声を出して、こまどりが鳴きました。
 これを聞くと、森は、元気づいたのです。
「あの美しいこまどりがきたな。どうか、この森に長くおってくれればいい。」と、木立は思ったのでした。
 多くの木立は、自分の枝へ、毎日のようにくるたくさんの小鳥たちを知っていました。しかし、どの鳥も、こまどりのように、美しく、そして、いい声をだして鳴くものがなかった。
「どうか、私の枝へきて、こまどりは止まってくれないものかな。」と、一本の木立は、考えていました。
 ちょうど、そのとき、そこへ飛んできたのは、やまがらと、しじゅうからでありました。
「たいへんに、寒くなりましたね。嶺を吹く風は身を切るようです。しかし、この森は、奥深いから、いつ雪になっても、私たちは、安心ですが……。」と、鳥たちは、話をしています。
 木立は、それを聞くと、自分も、じつに寒くなったように身震いをしました。
「しじゅうからさん、山のあちらは、暴れていますか? そういえば、もう雲ゆきが速くて、すっかり冬ですものね。また、雪の中にうずもれることを考えると、まったく、いやになってしまいます。あなたたちは、しあわせものですよ……。」と、しみじみとした調子で、木立は、いいました。
 やまがらは、その枝で、一度もんどりを打ちました。
「私たちがしあわせだって? ……それはちがいますよ。一日、風に吹かれて駆けまわっても、このごろは、虫一匹見つからないことがあります。それに、これからは、雨風に追われて、あちらへ逃げ、こちらへ逃げなければなりません……。」と、やまがらは、答えた。
「だって、そうして、自由に空を飛べるのじゃありませんか。私たちは、永久に、ここにじっとしていなければならない運命にあります。こうして、毎日、同じような谷川の音を聞いていなければなりません。先刻でしたか、こまどりさんの歌を聞きましたが、いつも、よい声ですね。」と、木立は、うっとりとしていいました。
「ほんとうに、あのこまどりこそ、しあわせ者です。どこへいっても、森や、林に、かわいがられます。森じゅうの木立が、どうか自分の枝にきて止まってくれればいいと思っている。私たちが、せっかく、一夜をそこにあかそうと思って止まると、枝が意地悪く、夜中に、私たちの体を揺すって、振り落とそうとする。それに、くらべれば、同じ小鳥とうまれて、こまどりは、ほんとうにしあわせ者であります。」と、二羽の小鳥は、口々にいいました。
 木立は、さすがに、気恥ずかしく感ぜずにはいられなかったのです。
「いえ、私だけは、そんな意地悪…

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