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草原の夢
くさはらのゆめ
作品ID52628
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 7」 講談社
1977(昭和52)年5月10日
初出「教育研究」1930(昭和5)年7月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者館野浩美
公開 / 更新2020-07-08 / 2020-11-01
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 私たちは、村はずれの野原で、日の暮れるのも知らずに遊んでいました。草の上をころげまわったり、相撲を取ったり、また鬼ごっこなどをして遊んでいると、時間は、はやくたってしまったのです。
 毎日学校から帰ると、家にじっとしていられませんでした。机に向かっても、遠くあちらの草原の方から、自分を呼んでいる声がきこえるようです。そして、大急ぎで、復習をすますと、駆け出してゆきました。
 ある日のこと、正ちゃんや、善ちゃんは、もう先に野原へいっていて、なにかしながら、わいわいいっていました。
「なにをして遊んでいるのだろう?」と、私は、そのそばへ駆けてゆきました。
 二人は、おんばこの花茎を取ってきて、それをからみ合わせて、相撲を取らしていたのです。太い茎が、あたりまえなら、細い茎より強くて、切り放してしまうのですけれど、見ていると、善ちゃんの持った細いのが強くて、正ちゃんのつぎつぎに出す太い茎をぶつりぶつりと切ってしまいました。
「やあ、勝った! 勝った! どんな強いのでも持っておいで!」と、善ちゃんは、いばっていたのです。
「善ちゃんのは、強いなあ。だけど、こんど、僕、きっと負かしてみせるから。」
 こういって、正ちゃんは、おんばこの花茎をさがしに立ち上がりました。
「よし、善ちゃん、こんど僕とやろうよ。」と、私は、いいました。
「ああ、どんな強いんでもいいから、持ってきたまえ。」
 善ちゃんは、まだたくさんある、自分の手の中の花茎をながめています。そして、正ちゃんのすわっていたところには、みんな半分に切れたおんばこの茎がいたましく散らばっていました。
 白い雲の多い日です。日の光は、きらきらと草の葉の上にあたっていました。私たちは、おんばこをさがして実のなっている長い茎を抜いて歩きました。
「こんなに採った。もういいだろう……。」
 走って、私は、善ちゃんのいるところへもどりました。正ちゃんも、幾本となく握って、かたきうちをしようと、勇んで駆けてきました。
「さあ、善ちゃん、僕としよう。」といって、私は、強そうなのをよって、向かいますと、善ちゃんの強い、正ちゃんのをみんな切った茎が、もろく破れて、私のに負けてしまいました。
「あんまり戦ったから、弱ったんだよ。」と、善ちゃんは、惜しそうに、半分になった茎を拾いました。それから、しばらく私の天下がつづきましたが、いつか、正ちゃんの太い強いやつにかなわずに負けてしまったのです。
「堅い土に生えている、おんばこの茎が強いんだよ。」と、正ちゃんは、大きな発見をしたように叫びました。
「そうだよ。人間だって同じいじゃないか……。」と、善ちゃんは、いいました。
 私は、「はたして、そうだろうか?」と、疑わざるを得なかったのです。なぜなら、孝ちゃんの家は、お父さんがないのに、また姉さんが病気で、一家は不自由をしつづけている。それ…

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