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古川ロッパ昭和日記
ふるかわロッパしょうわにっき
作品ID52692
副題04 昭和十三年
04 しょうわじゅうさんねん
著者古川 緑波
文字遣い新字旧仮名
底本 「古川ロッパ昭和日記〈戦前篇〉 新装版」 晶文社
2007(平成19)年2月10日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2013-05-06 / 2014-09-16
長さの目安約 216 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

昭和十三年一月



一月一日(土曜)
 有楽座初日。
 十時に起きる。雨の正月だ。入浴し、羽織袴でお屠蘇をのみ、雑煮を少々。親子夫婦揃っての正月は今年が始めて。一時半、母上・道子とも/″\雑司ヶ谷へ墓参。雑司ヶ谷祖母上のとこへお年始に行く。四時に東宝グリルへ。古川緑波一座の年始挨拶の会。一同揃ふと、君ヶ代を合唱し、僕が一言、「昨年中は諸君勉強が足りないと思ふ、今年はもっと/\勉強して貰ひたい。僕も倍も仕事する気でゐる。今年は勉強しないものは、残して行くことも宣言して置く。」と述べた。大日本帝国万才を三唱、出征中の岩井達夫、大島時夫のために万才を三唱し、愛国行進曲を、徳山の主唱で合唱して散会。楽屋へ入る。入りは、大満員で、補助も出切り。序幕の間に、セリフを入れる。新年早々の不勉強で、まるでセリフが入ってゐないのだ。「大久保彦左衛門」の一景、ポン/\と膝をたゝきながら、講釈をやるところで、まるでセリフが出ず、「初日イのことなればアさうすら/\とは行かぬと思し召せ。」とやったのは我ながら大した度胸。「大久保」は僕の役が書けてないからつまらないが、思ったよりよかった。「初春コンサート」の「江戸っ子部隊」の歌は、大丈夫受けるらしい。「海軍のロッパ」は、時間がのびて十一時すぎたら、其筋の命により、とあって中断のやむなきに至り、フィナーレをやって打ち出し。おわびまでに、丁度来てゐた徳山を引ぱりだして、「愛国行進曲」を歌はせた。かくて十一時半ハネ。文芸部のみ残って、カット相談。


一月二日(日曜)
 十時半起き、寒い。座へ行くともう満員で札止め、何でも十日頃までは全部売切れの由。ヴァラエティ「初春のコンサート」幕切れはまるで手がないのは何うしたものか。昼がのび/″\になり五時十何分に終る。昼終ると部屋へ作者を呼び、カットをやる。一々自分で朱筆を入れたからうまくカット出来たが、時間になって食事できず、「大久保」終ってからスエヒロのオムレツとハヤシライス冷たいのを味気なく食ったのみ。夜の部、よく笑ふ。「大久保」大量カットしたので大分らくになったが、セリフがまだ入ってないので、まごつく。「海軍」もよく笑ふ。ハネ十一時五分前。
 楽屋へ吉岡社長来り、「此の一座で、マゲ物が必要か何うか、考へものだぜ。」と言はれたが、成程一考の必要がある。今迄は必要だったと言へる。が、今後、マゲ物の所謂浅草式レヴィウが必要か何うかは、問題だ。


一月三日(月曜)
 十時半起き、今日まではお屠蘇・雑煮。座へ出る、昼の部とっくに売り切れワイ/\入ってゐる。「大久保」大カットしたら、まあ見られるものになって来た。「初春コンサート」殆んど一受けなしは驚く。「海軍」は、兎に角笑ふ。幕間に間宮パン人年始に来る。芦原英了来り、初論じ、気持よくレヴィウとシャンソンについての論。夕食は、スコットのポタアジュ、ビフ…

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