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〔編輯雑記〕
へんしゅうざっき |
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作品ID | 52724 |
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著者 | 牧野 信一 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「牧野信一全集第一巻」 筑摩書房 2002(平成14)年8月20日 |
初出 | 「金と銀 第一号」金と銀社、1920(大正9)年4月5日 |
入力者 | 宮元淳一 |
校正者 | 門田裕志 |
公開 / 更新 | 2011-07-12 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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△銀座通りで夜更迄話した、「雑誌をやらう」と、それでも足りないで家へ帰つて夜明しなどした。五年も前の話である、鈴木と二人で、春の夜だつた。感傷的な事を云ふやうだが、今度「金と銀」が四月に出る、沈丁花の香りを窓にしながら私はこれを書く、つまらない因念だが、それも自分の悦びの一つだ。
△あの頃なら自分は全部を投げて、雑誌の仕事に従事する事が出来た、今は、この他になさなければならない沢山な仕事を持つてゐる、この愉快な仕事に全部を挙げる事の出来ない身を嘆く、浜野や鈴木を寧ろ羨む。然し自分はそれだけに「金と銀」を思つてゐるのだ。自分は「永遠の自由の国」を発見したやうに喜むでゐる。社友の方にも屹度自分と仝じやうな考へを持つて下さると信ずる。新しく集つたものと云へ私達は皆な仝じ人なのだ。心と心の国が開けたのだ。縦令その国の装飾が貧弱であつても、私達は自分の世界を発見したのだから、その喜びは極みない、日を追ふて草木も植えやう、池も作らう、花園に花も咲かせやう、皆で一処になつて――さうして自分達で作つた自分達の楽園で永遠の悦びに浸らう、そこでは、いくら歌つても誰一人とがめない、互に真の理解を持ち合つてゆかう。