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ある男と無花果
あるおとこといちじく
作品ID52990
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 4」 講談社
1977(昭和52)年2月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者富田倫生
公開 / 更新2012-03-14 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 ある男が、縁日にいって、植木をひやかしているうちに、とうとうなにか買わなければならなくなりました。そして、無花果の鉢植えを買いました。
「いつになったら、実がなるだろう。」
「来年はなります。」と、植木屋は答えました。しかしその木は、小さくありました。
 男は、それを持って帰る途中夕立にあいました。
 もう、そのときは、そんな木どころではありません。木などは、どうでもよかったのです。友だちの家に頼って、雨のやむまで待って、帰りには、その無花果の鉢を預けてゆきました。
 幾月も、幾年もたちましたけれど、男は、忘れたものか、友だちの家へあずけた木を取りにゆきませんでした。
 しかし、この男は、なかなか欲深でありました。五、六年もたって、ふと、いつか自分は無花果の木を友だちのもとにあずけておいたことを思い出しました。さっそく取りにゆきました。
「あなたが、きっと取りにおいでなさると思って、大事に育てておきました。」と、その家の人はいって、裏庭に案内しました。
 大きな無花果の木に、実がいっぱいなっていたのです。男は、驚きました。かつ当惑しました。しかたがなく、掘って、車に載せて帰りました。
 しかし、それは、木を移す時期でなかったので、実もしなびてしまえば、木も枯れてしまいました。
 けっきょく、男は、ほねおり損に終わったわけです。



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