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雪の上の舞踏
ゆきのうえのぶとう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 6」 講談社
1977(昭和52)年4月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者栗田美恵子
公開 / 更新2018-12-15 / 2018-12-09
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 はるか北の方の島で、夏のあいだ、働いていました人々は、だんだん寒くなったので、南のあたたかな方へ、ひきあげなければなりませんでした。
「お別れに、みんな集まって、たのしく一晩おくりましょう。」と、それらの人たちは、話しあいました。
 丘の上に、一つの小屋があります。それには、赤い窓がついていました。ある晩のこと、彼らは、そこへ集まりました。そこで、男も女もまじって食卓についたのです。食卓の上には、いろいろのくだものや、魚や、鳥や、獣物の肉などがならべられ、また、色のかわった酒が、めいめいの前においてあったコップに、そそがれていました。
 このかんばしいにおいは、小屋の窓から外へながれでたのです。島にすんでいたきつねは、このにおいをかいで、たまらなくなりました。そして、どこからながれてくるのだろうと思って、さがしにきました。
 きつねは、小屋の中で、人間たちが、たのしそうにごちそうを食べているのをながめました。外は、暗くなって、夕やけは、わずかに森の頭にのこっているばかりです。これにひきかえて、へやのうちは昼間のように明るかった。
「人間は、ああして、たのしそうに暮らしているが、私たちは、いつも、おなじくらしでつまらない。」と、きつねは、思って、こちらの木の下に立って、ひらかれた窓から見える中のようすに見とれていたのです。
 そのうちに、食事をおわったとみえて、みんなは、食卓からはなれて、歌をうたい、楽器をならして、ダンスをはじめました。中にも、女たちは、美しかった。みんなが、いちばんいい着物をきて、持っているだけの指輪をはめてきたからです。そして、男も、女も、調子をとって、おもしろそうにおどったのでした。指輪についている宝石からは、青い光や、金色の光が、女たちのからだを動かし、手をふるたびにひらめいたのでした。
「まあ、なんという美しいことだろう。」と、きつねは、感心してながめていました。がんらい、道化者のきつねは、いつしか、見ているうちに、自分までうかれごこちになって、みょうな腰つきをしておどりだしたのでした。
 その晩は、おそくまで、小屋の中は、にぎやかだったのです……。しかし、いまは、寒い、寒い、冬でありました。白く、雪は、島の上をうずめていました。あの人たちは、いまどこにいるか、おそらく、来年の春になって、島の雪がとける時分、やってくるときのことなどを考えていると思われたのでした。
 はげしく風が、雪の上を吹くばかりで、あたりは、しんとしていました。きつねは思い出したように、ためいきをついて、
「ああ、つまらない。」といって、空をあおぎました。いつしか、日は暮れてしまって、星がきらきらと輝いていました。
「なにが、そんなにつまらない。」と、星がいいました。その大きな星は、北海の空の王さまだったのです。
「お星さま、私は、さびしいのです。いつか、人間…

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