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自由
じゆう
作品ID53131
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 6」 講談社
1977(昭和52)年4月10日
初出「童話文学」1929(昭和4)年4月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者へくしん
公開 / 更新2021-06-05 / 2021-05-27
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 街の鳥屋の前を通ったとき、なんという鳥か知らないけれど、小鳥にしては大きい、ちょうど小さいはとのような形をした鳥が、かごの中にいれられて、きゅうくつそうに、じっとしていました。
 黄色なくちばし、その鈍重なからだつき、そして、たえずものおじする、つぶらな黒い目を見ると、いじらしいという感じをさせられた。私は、この鳥をきらいでなかったのです。
「こんなに、狭いかごへいれられたのでは、身動きもできないだろう。」
 自分の家には、これよりは、大きな空きかごのあることが頭に浮かびました。で、ついこの小鳥の価をきいてみる気になりました。
 鳥屋のかみさんは、さっそく、店さきへ出てきたが、価は、あまり安くなかった。しかし、一度買おうと思った心は、すこしくらいのことで、また、やめる気にもなれなかったのです。それほど、私は、この鳥をほしくなりました。子供の時分、村はずれの林や、寺の墓地などへ、おとりの鳥かごをさげていって、ひわや、しじゅうからなどを捕らえたことを思い出すと、どこからともなく、すがすがしい土の香がして、木の間をくぐってくる冷ややかな風が、身にしみて、もう久しいこと忘れていた生活に、ふたたび魂がよみがえるように、急に、体じゅうがいきいきとしたのであります。
「こんなに、小さいかごにいれておいてもいいのだろうか。」
「この鳥には、すこしかごが、小さすぎますね。もっと大きなのにいれてやれば、ほんとうはいいのですが。」と、かみさんは、答えた。
 なぜ、そうわかっていたら、そうしてやらないのだろう? 鳥は、ものがいえないから、されるままになって、ただ餌を食べて、生きている。しかし、そのようすを見ると、それに満足しているようにも思われるが、それも、ものがいえないからだろうと考えられるのでした。
 私は、紙袋の中へ、鳥をいれてもらって、家に帰り、もっと大きなかごにいれてやりました。鳥は、知らぬ場所にきたので、いっそう、ものおじして、目をぱちくりしていました。
「この鳥は、よほど臆病とみえるな。」
 私は、目をこらして、鳥を見ているうちに、鳥の長いはずの尾が、短く切られているのを発見したのです。
「あ、小さなかごへいれるのに、じゃまになって、尾を切ったのだ。」
 そう思うと、いい知れぬ不快を、だれがしたか、この残忍な行為から感じられました。生きている鳥を本位にして、かえって、無理に鳥を小さくしようとする、冷酷さを思わずにいられません。
 日数がたってから、その鳥の名が、☆いかるがであることもわかりました。なんでも、はとの種族に属するこの鳥は、鳥の中でもよく大空を自由に翔ける、翼の強い鳥だということを知りました。
「そんなに、よく飛ぶものを、こんなかごの中にいれておくのは、よくないことだ。」
 こう、私は、思ったのです。そのときから、自分は、なにか悪いことをしているような、鳥…

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