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ボデー意匠審査会 美術の粋を蒐め独特の形態美へ
ボデーいしょうしんさかい びじゅつのすいをあつめどくとくのけいたいびへ
作品ID53519
副題――豊田常務の挨拶――
――とよだじょうむのあいさつ――
著者豊田 喜一郎
文字遣い旧字旧仮名
底本 「豊田喜一郎文書集成」 名古屋大学出版会
1999(平成11)年4月15日
初出「トヨダニュース 第三号」1936(昭和11)年7月5日
入力者sogo
校正者塚本由紀
公開 / 更新2015-06-14 / 2015-03-08
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 わが社主催の乘用車車體設計懸賞作品審査會は六月廿日東京帝國ホテルに開催されたが晩餐會席上豐田常務、和田三造畫伯は夫々主客を代表して左の如き挨拶を交換、わが國自動車車體の將來に關し重大な示唆を與へた。

 本日は御多忙中の處、小社の企てに御賛同下されました御厚意を幾重にも御禮申し上げます。
 私は此の數年來より自動車工業の確立に就いて關心して居りましたが、實地に自動車の製作に着手したのは三年以前の事でしたが、近々乘用車を發表致しますに就き、其の後の乘用車の設計プランを如何にするかと云ふ問題に自然逢着した次第であります。
 皆樣御承知の樣に、多年の懸案であつた自動車製造事業法案も愈々議會を通過致しました事は、啻私達自動車工業に携つてゐる者のみの喜びとする所ではありません。
 由來自動車工業は難事業とされてゐます。從つて自動車工業こそ絶對に一等國でなければ企て得ない物とさへ稱されて居ります。一等國と謂へば、我が國は世界に隱れもなき一等國として自他共に許してゐますが、唯一此の一等國の事業である自動車工業だけが、文字通り全く閑却せられてゐたのであります。
 幸にして此の自動車工業の不毛地とされてゐた我が國にも關係法案が通過し官民擧げてこの事業の成長發達に資して行く氣運の喚起されました事は、私達としましても欣快此の上なき事と存じ、併せて此れに携つてゆく者の責任の重大さを痛感しないわけにゆきません。私は勿論一個の機械製作者の立場として、一刻も早く完全な車を祖國の地上を走らせ度いと日夜念願致して居るのであります。此れと同時に、私は自動車に含まれてゐる美術的方面を考慮しないわけにゆきませんでした。單に製作技術に於て外國車を凌駕してゆくのみならず、此の車體の意匠や設計方面にも斷然日本獨特の美術的要素を創造し發揮したいと考へた次第であります。
 依て豫て知己を得てゐる和田三造畫伯に私の意中を洩した所、双手を擧げて私の趣旨に御賛同下され、直ちに之を具體化する事に就て絶大なる御後援を賜つた次第であります。其の結果和田先生の御關係してゐらつしやる東京美術學校及び高等工藝學校兩校學生から車體設計圖案を募集するの勞を取つて下されたわけであります。此の席から和田先生の御厚意を感謝させて頂きます。
 美術關係の若い人達が如何に自動車を感じてゐるかと云ふ事が、此處に陳列した作品で其の一端を窺へるかと存じます。此の設計審査は、單に一會社の自動車製作事業を御後援下さるといふ意味のみならず、今や黎明を告げた我が國自動車工業の前途に、併せて現下の我が國自動車工業全體の者に、有力な頭腦賛助を提供して下さるものと存じます。一人豐田の感謝する所のみならず、我が國自動車界の人達は、何れも、此の御熱心なる御審査振りを拜見したなら、感謝する所と存じます。
 惟ふにわが國は世界でも優秀なる美術國として許されて居りま…

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