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同志古味峯次郎
どうしこみみねじろう
作品ID53669
副題――現在高知牢獄紙折工なる同氏に――
げんざいこうちろうごくかみおりこうなるどうしに
著者槙村 浩
文字遣い新字新仮名
底本 「槇村浩詩集」 平和資料館・草の家、飛鳥出版室
2003(平成15)年3月15日
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2014-10-07 / 2015-03-14
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

誰がこの困難無比の時代に
労働者の利益のために最も正しい道を選んだか
―――壁に頭を打ちあてるようなこの時代に
その一つの例をおれは示そう―――確かに正しく!
古味峯次郎君
彼は鋼の中から打ち出され、飢餓の闘いが彼をボルセヴィキにまで鍛え上げた

(1)
彼は越知の狭い町はづれの
小作兼自作農の家に生れた
そしてこんな南国の山麓の息子たちがそうであるように
十八の彼は
嶺を越え
花崗岩のはすに削られた
灰青色の岬の燈台を
ぐっと
海のはてに斜めに回転させ
そして
戸畑の炭坑にスコップをとった

彼は間もなくたくましい労働組合の一員だった
彼の上にはすぐれた同僚今村恒夫氏がいた
彼等の突撃隊は
耳朶の後にピストルを聞きながら
断崖のきりぎしを駆け下り
坑道に集会を組織した
こんな時彼はいつも面と向って誰ひとりに顔をそむけなかった

運動は苦しく
ブルジョアジー三井は、彼の健康と職業を奪い
先輩今村を頼って、彼は上京した
古い同僚は真赤な顔をしてどなりつけた
―――地方の部署を知れ!
彼ははっきりその一語を耳にしめた
そして
彼はその夜東海道を西え帰ってきた
高知、小工業の多い変りばえのせぬ故郷
彼は紙のような白けた病体を抱えながら
この部署にぴったりくっつこうと決意した

(2)
一九三二年
二十の彼は××(1)青年同盟員だった
天×(2)は特製の高知紙をそなえつけた彼の寝室へ、有名な少年××を徴発し
政府は満州え高知の労働者農民を徴発した
―――日本交通運輸労働組合高知支部。青年同盟、×(3)フラク
彼はこの中で
地味な地鼠のように
すばらしい
活動をした
動員令下の地下作業がどんなに困難なかは
×(4)フラクと軍隊細胞のみが知っている!
逮捕と
脱走―――
彼は上海の塹濠で
カーキ色の軍服を着、日本製の軍帽の下で黙々と仕事をした
×(5)動と飢えた不満のニュースは全線からとび/\に彼等の耳に入ってきた
彼のグループの射撃した機関銃は
前哨線から向うでは
決して×(6)え×(7)ばなかった!

一九三三年
かつてこんな苦難な、だが健全さがあくまでも強いられねばならぬ時代があったろうか
鎮圧された×(8)動の軍隊と
根こそぎ吹きさらそうとした嵐の部署の間に
彼はふしぎなほどすばやいイニシャチーブをもち
若い、ほんとに元気な同僚たちと共に
粗雑な地床の下で、根こそぎ活動をつゞけた
嵐と嵐が、育ちはじめた「工場」を頭から叩きのめそうとする時
×(9)は
工場細胞のたゞ中から
はじめて高知地方の大衆の面前に姿を現わし
巧みな技巧をもって
組織の糸を各産業に伸ばした

決死の誓約が
彼等の間に交わされていた
苦難期の×(10)員は死をもって組織の秘密の前に絶対緘黙を守らねばならぬ!
ありとあらゆる拷問が、あらゆる野蛮な形式で行われた
死の拷問場と呼ばれた高知と高岡署の…

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