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幼年
ようねん
著者金 鍾漢
文字遣い新字旧仮名
底本 「〈外地〉の日本語文学選3 朝鮮」 新宿書房
1996(平成8)年3月31日 
初出「国民文学」1942(昭和17)年7月号
入力者坂本真一
校正者hitsuji
公開 / 更新2019-09-27 / 2019-08-30
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


ひるさがり
とある大門のそとで ひとりの坊やが
グライダアを飛ばしてゐた
それが 五月の八日であり
この半島に 徴兵のきまつた日であることを
知らないらしかつた ひたすら
エルロンの糸をまいてゐた

やがて 十ねんが流れるだらう
すると かれは戦闘機に乗組むにちがひない
空のきざはしを 坊やは
ゆんべの夢のなかで 昇つていつた
絵本で見たよりも美しかつたので
あんまり高く飛びすぎたので
青空のなかで お寝小便した

ひるさがり
とある大門のそとで ひとりの詩人が
坊やのグライダアを眺めてゐた
それが 五月の八日であり
この半島に 徴兵のきまつた日だつたので
かれは笑ふことができなかつた
グライダアは かれの眼鏡をあざけつて
光にぬれて 青瓦の屋根を越えていつた



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