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冬の逗子
ふゆのずし |
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作品ID | 53943 |
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著者 | 桜間 中庸 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「日光浴室 櫻間中庸遺稿集」 ボン書店 1936(昭和11)年7月28日 |
入力者 | Y.S. |
校正者 | 富田倫生 |
公開 / 更新 | 2011-12-22 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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わびしさのつもれば獨り訪ね來て悲しき海の冬を聞くなり
水面擦り飛ぶおほ鳥の眞白なる翼に疲れ見えて哀しも
うら枯れし濱晝顏のながながと此處別莊の裏につゞけり
半島の岩に碎くる波見えて浪子不動に日は暮れなずむ
不動堂の折鶴の色あせゆきて冬に入るなりこゝ逗子の濱
手向けたる菊も懷かし不動堂やさしき主の住まひ給へば
折鶴の吊られたるまゝ色あせし不動の冬の夕べは哀し
マリやマリ汝知るやこの不動尊汝の瞳清らかなるよ
不如歸蘆花と刻みし石碑なほ倒れたるまゝ冬に入りたり
あまた窓皆カーテンを降したり海濱ホテルに人氣は見えず
濱の夕を馬走らする乙女あり赤き乘馬着のたのもしきかな
なぎさ打つ波のかけらのほの見えて葉山のはまに日は暮れるらし
馳けりゆく馬車馬の背にあかあかと落日にじめり葉山街道