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赤兵の歌
せきへいのうた
作品ID53970
著者江森 盛弥
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社
1987(昭和62)年5月25日
入力者坂本真一
校正者石津大介
公開 / 更新2013-03-05 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


俺達は一度に声を挙げて集まって来たのだ、
反動の軍旗をへし折って来たのだ、
真っ青になって口も利けなくなった師団長の
高慢なシャッポを蹴飛ばして来たのだ。
俺達は目まいのしそうなビルディングの足塲から下りて来たのだ。
俺達は街の鋪道から――
地下工事の泥水の穴の中から匍い出して来たのだ。
俺達は汽関車の胴の中から
煤だらけの顔をしてやって来たのだ。
俺達はボイラーの前からスコップを投棄てて来た。
俺達は「就業中面会謝絶」の工場から、
屋根までガタガタ呻らせる動力を止めて来たのだ。
俺達は飢餓の中から
俺達は軒の下から
俺達は寒気の中から
一度に声を挙げて集まって来たのだ!

さア、時が来たんだ!
素晴らしい生活が始まるんだ!
もう昨日の惨めな俺じゃないぞ。
昨日の俺じゃないぞ。
いいか、いいか、いいか!
しっかりやれ!

クレムリンへ向ってブッ放された、
最初の一発!
疾風のように、広場を横切って走った、
最初の赤旗!
――さア! 合図だ!
心の底に蓄積されていた全ての欝憤、
復讐と、怒りと、憎悪を、
爆発させろ!

俺達の生きた肉をムシャムシャ喰った奴等。
勲章とシルクハットの反動共。
泥棒の分前を、
気に入りの片隅で楽しんでた奴等、
あの忌々しい「満足してた」奴等を、
倒してしまえ!
国境の外へ押し出せ。
プロレタリヤの祖国を
母を妹を子供達を、老人達を
此の革命で
守れ!

資本家が、地主が、貴族が、坊主が、
俺達の首っ玉を引きずって
吹雪の、戦線に追いやったのではないぞ、
俺達の雨脚は雪の中で石のように凍っているのに、
レーニンは自動車で並木道を滑って行く、
――割が悪いと、ブツブツ云う奴は恥じろ!
ああ! 一人ぽっちだった俺、
失業と餓死の脅怖におびえた眼で、
入口の守衛の顔をオズオズ見ながら
牢屋のような鉄の格子の窓の中で、
働いて居た俺、ボロボロの青服の俺、
投捨てられたように助けのない者だと思っていた俺。
だが、今は知っている!
今は知っているぞ! 俺は唯の一人なのではない!
俺はプロレタリヤだ!
レーニンは俺の足で、俺は彼の腕なのだ。
俺はパリのコミュンの時から生きていた。
そして地球と一緒に、
太陽と一緒に、
いつまでも生きて行くだろう!



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