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須賀爺
すがじい
作品ID54003
著者根岸 正吉
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社
1987(昭和62)年5月25日
初出「新社会」1916(大正5)年6月号
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2015-08-28 / 2015-05-25
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


須賀爺の面の憎さよ。
あの
額に寄する残忍の皺よ。
冷酷のまなざしよ。
憎らしき靨よ頬っぺたの穴よ。

須賀爺の面の憎くさよ。
今日も亦緯糸をたぐりしと叱りし。
解雇するぞとおどかせし。
そんなに叱るなよ。罵しるなよ。
おれは慣れないのだ。
機台の前に立つさえ怖いのだ。
あの杼の音箴打つ音にも驚くのだよ。

須賀爺の面の憎さよ。
おれのみが憎むのではない。
みんなだ。
時間が十二時を打っても機械が止まっても
汽笛の鳴らぬ間は
飯食いにやらぬと出口に立ち塞がる。
あの面の憎くさよ
(『新社会』一九一六年六月号にN正吉名で発表 一九二〇年五月日本評論社刊『どん底で歌う』を底本)



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