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鉄のシャフト
てつのシャフト |
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作品ID | 54007 |
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著者 | 野村 吉哉 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社 1987(昭和62)年5月25日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-11-15 / 2015-09-01 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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ゴシゴシゴシキイキイゴシゴシ……
俺の役目はでっかい鉄のシャフトを磨くのだ
まっ赤に染まったどろどろの手袋の中で
感覚を失ってしまっている俺の手は
俺の全生命をこめて鉄のシャフトを磨くのだ
――捨値で買ったボロボロに腐りかけた幾万本の鉄のシャフトは
磨いて塗って幾十倍に売りつけられるのだ
コンミッションの力で
新品としてスラスラ通って行くのだ
買うのは誰だ――やっぱり俺達だった
売った生命の代価はかくして奪われ
残る物は何だ――残るものは病根だ。老衰だ。発狂だ。いや死だ!
「しっかり力を入れて磨けやい」
かんとくにどなられ
ゴシゴシゴシキイキイゴシゴシ
磨く俺の手にまっ赤にこびりつくものは何だ
――こずり減らされた生命だ――いやその代価だ。奪われた代価だ
(発表誌不詳 『新興文学全集』10を底本)