えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
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檻の中
おりのなか |
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作品ID | 54010 |
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著者 | 波立 一 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社 1987(昭和62)年5月25日 |
初出 | 「戦旗」1928(昭和3)年10月号 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-08-07 / 2015-05-24 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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昨日は重い空に湿っぽい風だった。
鋲どめた「五月祭のビラ」の傍に
白い優曇華の花が咲いていたっけ
梅雨時の箒を遁れて咲いていたっけ
首 うなだれてはこみあげる憤怒を
首 うなだれてはこみあげる憤怒を
奴!
首 うなだれてはこみあげる憤怒!
今日は薄縁三畳の檻の中
鉄格子と金網の窓に獅噛みつき
ガラス戸の隙間三寸
高い石塀を越えて
黒雲ちぎれ飛ぶ空模様に
凝乎と眼を注ぎ
歯を喰いしばって北叟笑むでる。
(『戦旗』一九二八年十月号に発表 一九三一年一月改造社刊『戦旗三十六人集』を底本)