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君達に送る――新しい民衆の精神
きみたちにおくる――あたらしいみんしゅうのせいしん |
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作品ID | 54026 |
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副題 | ――雑誌『民衆』の創刊号に―― ――ざっし『みんしゅう』のそうかんごうに―― |
著者 | 百田 宗治 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社 1987(昭和62)年5月25日 |
初出 | 「民衆」1918(大正7)年1月創刊号 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-08-16 / 2015-06-28 |
長さの目安 | 約 3 ページ(500字/頁で計算) |
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いま僕は君達に書く、
最も新しい名で君達をよび、
僕のあらゆる精神をこめて。
君達は知っているか、
いま僕等がどんな時代にいるかと云うことを、
いま時代がどんな方に動いているかと云うことを、
おお君達の生誕を待っていた世界、
君達はあの声をきくだろう、
澎湃として起ってくる声、
いまや世界のあらゆる隅々から、
あらゆる国土を充して、
すべてのものの胸を開かしめる、
新しい民衆の精神を。
おおいま君達を求めてきたこの声、
君達の窓の外に一杯になっているこの声、
あらゆる国語で、
あらゆる個々の発想で、
いまや世界を領有しにゆく声、
六合を一切の迷蒙から救いにゆく声、
あらゆる文化の偶像を根本から転えすこの声、
自由と新しいこの声。
おお君達は耳傾ける、
おお君達が求めつつあったものは之れだ、
君達の精神のうちに鬱積しつつあったものは之れだ、
おお既に君達はこの声を叫んでいたのだ、
君達の生命は既にこの精神のうちに目ざめていたのだ、
ここに生きつつあったのだ、
新しい生命に充されていたのだ。
民衆!
何と力強い人間の言葉だ、
一切の誤った文化の迷蒙から剥脱した真人、
宏大なるマッス、
めざめた精神、
それは深く開かれた人間の眼だ、
新しい精神だ、
鬱積していた久しい土上の爆発だ、
埋れていた真の人類の覚醒だ、
新しい相互扶助の世界だ、
正しい人類の意志だ、
正しい針路だ。
見よ裸の僕達を、
新しき世界魂を、
若き魂を、
自由の僕達を、
一切の哲学的迷蒙から自由な僕達を、
一切の宗教的迷蒙から自由な僕達を、
一切の科学的迷蒙から自由な僕達を、
一切の支配と圧制から自由な僕達を、
一切の伝統的因習から自由な僕達を、
一切の階級、不当の権力、一切の他動意志から解放された精神を、
僕等を圧倒し、押え、
僕達に強いさせられた一切の約束から
いま全く別物の上に立つ精神、
新しい世界の築造。
吾々の胸は開け、
吾々の上には宏大な空があるばかりだ、
吾々は自然に対して生きるのだ、
太陽に対して、
月、そして無限の星斗、
雨、そして暴風、洪水に対して、
稲妻、雷鳴、海嘯に対して、一切の媒介物を排し、
真裸かで夫等のものに面接するのだ、
彼等のうちに正しい人間を拡大しにゆくのだ、
真の人間の実現だ、
真の人間の幸福と平和と事業をうち立てるのだ、
正しい旗じるしをひるがえすのだ、
共働の精神を生きるのだ。
民衆の声こそは世界の声だ、
一切のものが更新されるのだ、
一切の組織が人間自然の意志に帰るのだ、
人間と自然が抱き合うのだ、
そしてそれを高めてゆく世界、
そこに民衆的文化――正しき人間と自然との結合、
強い意志――永遠の生長。
(一九一七年十一月十日作 『民衆』一九一八年一月創刊号に発表 『百田宗治詩集』を底本)