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夕暮の別荘地に歩み入る兵士たち
ゆうぐれのべっそうちにあゆみいるへいしたち |
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作品ID | 54030 |
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著者 | 百田 宗治 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社 1987(昭和62)年5月25日 |
初出 | 「ぬかるみの街道」大鐙閣、1918(大正7)年10月 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-07-16 / 2015-05-25 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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喇叭の音、
疲弊した魂からしぼりだす最後の勇気のような
いま夕暮れの空に反響を呼んで
響きわたる喇叭!
おお汗みずくの兵士、
夏の夕暮の
湿やかな大気に充ちた郊外の別荘地にいま歩み入ってくる一隊、
重い背嚢、
きらめく銃剣――埃まみれの靴、
一日の演習に疲れて
へとへとになって帰ってくる是等の人々、
空腹――眩暈、
いま靴の音も不揃いに
ふりあげる喊声……
水撒かれた小径、
うちつづく生籬、
ああその中を
彼等の一隊は過ぎてゆく、
いま遠くなる喇叭、
靴の音、
労苦と疲弊の一日の終り、
ああ落日の空の下の
一きわ高い彼等の歌!
(一九一八年十月大鐙閣刊『ぬかるみの街道』に発表 一九二〇年十月新潮社刊『百田宗治詩集』を底本)