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全体の一人
ぜんたいのひとり
作品ID54038
著者陀田 勘助
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」 新日本出版社
1987(昭和62)年5月25日
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2016-01-18 / 2015-12-24
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


独房の中にたった独りでいるおれは決して孤立したものでない
全体の中の部分だ!
おれはどこから生れてき、また何を背負っているか!
両親のまた両親とおれの系統をたどってゆくとき、
おれの前には数万人の祖先が立っている
独房の中にいるたった独りのおれの身体は数万人の祖先の血と肉で組織されているのだ
そして、物質の組織――神経系統に花咲いた精神も、それゆえに数万人の――いやもっともっと多数の知識の集積と結論できよう!
たったひとりのおれでさえ永いながいそして複雑な歴史の結果であり将来の原因となり得るのだ
たったひとり独房の中で考えているおれでも
全体の中の部分だ!
だがこの推理は至って抽象的で、おれのすべての現実でないのだ!
おれは投獄されたプロレタリアートの一人だ!
ここからあらゆる思索を出発させなければならない
おれの前に確乎として峙立つコンクリートの壁!
ここからあらゆる思索を出発させなければならない
おれの前に確乎として峙立つコンクリートの壁!
このかなたにある
複雑きわまる対立をもつ全体の中の部分だ!
(獄中から松田解子宛書簡一九三一年三月十九日付 『陀田勘助詩集』を底本)



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