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手
て |
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作品ID | 54064 |
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著者 | 今村 恒夫 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」 新日本出版社 1987(昭和62)年6月30日 |
初出 | 「文芸戦線」1929(昭和4)年8月号 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2014-06-30 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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俺達の手を見てくれ給え
ごつごつで無細工で荒れて頽れて生活の如に殺風景だが
矍鑠とした姿を見てくれ給え
頑健なシャベルだ
伝統と因習の殻を踏み摧き
時代の扉を打ち開く巨大な手だ
りゅうりゅうと筋骨はもくれ上り
俺達の如く底力を秘めている
どきっどきっ脈打つ血管には
火よりも赤い革命の血が流れ
すべっすべっ皮膚は砲身の如く燿いている
ペシャンコにひしゃげた爪は兄弟達の顔面の如に醜いが
頑固で硬質で
彼奴等の弾圧位びんびん弾き返すのである
干からびた田圃の如な掌の亀裂も少しの悲しい色もなく
手其物が光に包まれ
荒っぽい指紋が何と莞爾に明日を約束している事か
手は戦闘の意欲に燃え
胼胝は打ち固められた決心の固さ
目には見えないがあらゆる世界の同志の手と握り交され
広大な戦塵の列伍に副い
采配の下る日を待ち侘びているのである
ぎゅっぎゅっ鳴っている闘志を聞く事が出来るだろ
来るべき俺達の世紀を見る事も出来るだろ
生々しい闘争の跡は皺の間に刻まれ
ぎゅーっと握れば奴等へ投げつける手榴弾
開けば奴等の土台を覆す鋤犂ともなる
十本の指がびんびん働く行動は
何時も組織と統制の上での飛躍
手の中には先祖代々の魂が住み
搾られて空しく死んだ祖先の反逆が爆発し
焔の如く燃しきっているのである
真黒い手
節くれ立った手
時代の尖端に飛躍する手
振り廻すとびゅっびゅっ風が唸り
剣をとって立ち上った勇姿が思われ
彼奴等の頭を打ち摧き
彼奴等の城壁へ突喊する殺気がむらむら湧き立ち上がる
急がず焦かず
手はじっと息をひそめ
鋼鉄製の情熱を沈め
軈来る幾百万の同志が双手を上げて振り翳す日のために
同志を集め
同志を教え
耐え 忍び 潜勢力を貯わうる革命の使徒である
(『文芸戦線』一九二九年八月号に今村桓夫名で発表『今野大力・今村恒夫詩集』改訂版を底本)