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鋼鉄
こうてつ
作品ID54065
著者今村 恒夫
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」 新日本出版社
1987(昭和62)年6月30日
初出「文芸戦線」1929(昭和4)年11月号
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2014-06-24 / 2014-09-16
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


俺達は貧困と窮乏の底で生れた
俺達は圧迫と不如意の中で生長した
俺達は鋼鉄になった 俺達は現代が要求する
共産主義者になった

俺達は地下から生み出された
光りを持たない暗黒と放浪と死に瀕した現実であった
堪え難い生活の溶鉱炉の中へ投げ込まれた
旋風と熱気と断末魔の苦悶と没自我の中で生れた儘の俺達は俺達を失った残滓を捨てた洗練された
鉱石は銑鉄になった俺達は戦線に召集された
そこで益々鍛われて行った
銑鉄は鋼鉄になった俺達は前衛闘士になったのだ
最早化学の如な魔術でも俺達を変ずる事は出来ない
俺達は何よりも強い 何よりも固い
俺達は何よりも必要だ 俺達は現代が要求する鋼鉄だ 革命的共産主義者だ
俺達は弾丸になって敵の腹の中に飛び込む
俺達は刃物になって切りつける。敵の生命のとどめをさす
俺達は輝かしい光明の彼岸迄レールを架ける
俺達は機関車になって驀進する
俺達は一人一人が柱になり桁になり各々の材料になり鉄筋建築の国家を創り上げて行く
暴風雨も火焔もつなみも俺達を破壊する事は出来ない
俺達は輝かしい主義者だ 俺達は何より固い鉄鋼だ。
(『文芸戦線』一九二九年十一月号に今村桓夫名で発表『今野大力・今村恒夫詩集』改訂版を底本)



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