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職場の歌
しょくばのうた |
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作品ID | 54079 |
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副題 | ――遠き地にいったるあいつにおくる―― とおきちにいったるあいつにおくる |
著者 | 大江 鉄麿 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」 新日本出版社 1987(昭和62)年6月30日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-09-25 / 2015-05-25 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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ダンダンダンダン……
歯車がかちかちとわめいている
モートルの野郎はブーンとうなっていやがらあ
ベルトが二百五十の回転速力できざむ様に……
ダンダンダンダン……
源兄いお前そのベルトの奴に右手を半分取られたな
近所の義もそのベルトの奴に指を三本喰われちまったぞ
ダンダンダンダン……
畜生ベルトの奴
貴様まで俺達の血をしぼると云うのか
源兄いが右手を取られた時の姿
近所の義が指を喰われた時の姿
血潮をしたたらせ歯をくいしばり
口唇は青ざめ
死人のようだって
思うと皮膚がむせかえるようだぞ
ダンダンダンダン……
職長の野郎少し口ひげをたくわえやがって……
右手と口で俺達を牛馬の様に使っていやがら……
畜生……
五年越のベルトで源兄いがやられた
六年越のベルトで近所の義がやられた
野郎
ベルトの一生を何年と思っていやがら……
ダンダンダンダン……
十五番力のモートルは地震のような金属の響きを立て……
俺はその音を圧し……
兄弟達に話す
「ベルトと源兄いの関係や
そして自由の国の話を」
ダンダンダンダン……
外はつららの張り切った寒い冬空
いつとられるや知れないこの足
いつとられるや知れないこの手
いつ喰いこまれるや知れないこの体
手足がしびれ体がかちばっているぜ
体が死人の様につめたいぞ!
この顔色を見ろ!
職長俺達も人間だぞ!
ダンダンダンダン……
だが見よ! 兄弟
体は氷りついて寒いがな!
胸に燃えつづける戦いの炎は
いつも真赤に焼けているぞ
(発表誌不詳 一九三四年十月前奏社刊『一九三四年詩集』を底本)