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千住大橋
せんじゅおおはし
作品ID54085
著者丹沢 明
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」 新日本出版社
1987(昭和62)年6月30日
初出「詩・行動」1935(昭和10)年5月号
入力者坂本真一
校正者フクポー
公開 / 更新2018-05-01 / 2018-04-26
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


川蒸気の発着所、旗はだらりと垂れ
大川は褐色の満水をたたえ
家々は庇をおろし、重り合う家並の彼方
瓦斯タンクは煤煙の雨空に溶ける
大川に架る錆びた鉄橋、常磐線、
貨車が長い車体を引ずってゆく
動かない煙、つながれて朽るボロ船、泛ぶ空俵
橋梁の陰に点々と黒く固まった人糞
それらの上を雨がたたいている。
江北の関門千住大橋、黒い鉄骨は川幅を跨ぎ
自転車、荷車、トラック、労働者、失業者、失業者
空気はぐしょぐしょに煤煙によごれ
人々は腹の中まで灰色にぬれ
眉毛から雨が滴り、眼はもの憂く渇き
江北の雨は胃袋にまで浸み徹る
自転車――失業者、失業者、絶え間なき流れ
声のない喧騒にあわただしく歩き
騒々しい静寂のなかに佇み、息をのみ
大橋を渡ってゆき、大橋を渡って帰ってくる。
(『詩・行動』一九三五年五月号に発表)



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