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極めて家庭的に
きわめてかていてきに
作品ID54101
著者木村 好子
文字遣い新字新仮名
底本 「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」 新日本出版社
1987(昭和62)年6月30日
初出「詩人」1936(昭和11)年2月号
入力者坂本真一
校正者雪森
公開 / 更新2015-10-24 / 2015-09-24
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


すそを吹き上げる
北風は凍り
おおいのない、野天の井戸
洗い物をしぼる手はまっ赤
お前は温順
お前は過去の女
ぱっと冷いしぶきがとびかかる
私は空を仰いだ
くらくらと瞼をおおう
おもい冬空

生活はつづく
新しいものと
古いものが
ごっちゃになってどんでんがえり
新しいモラルの前では
或る女たちが特権を以て針を折り
ひしゃくを投げすて
昨日のくびきをふりほどく

そこには
栓をひねればお湯がとび出す
手をよごさずとも
夫に清潔なカラーをつけさせることが出来る
御馳走も思いのままに……
ゆたかな温床が用意されている

特権をもたない女たちは悲惨だ
自我を失い
個性を失い
文化に背を向けて
パチパチ炭火を煽って飯をたき
あかがね色の庖丁で
菜っぱをきざむ
己れをきざむ
古いわだちにすべりこみ
極めて家庭的な荊棘の冠をいただかねばならない

お前 だがほこりもて
家庭の女よ
やさしく、つよく
冬空の下で、洗え
洗え………
日本の女の無知と朦昧を――
(『詩人』一九三六年二月号に発表)



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