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世はさながらに
よはさながらに
著者三好 達治
文字遣い旧字旧仮名
底本 「三好達治全集第一卷」 筑摩書房
1964(昭和39)年10月15日
初出「婦人公論」1940(昭和15)年4月
入力者kompass
校正者杉浦鳥見
公開 / 更新2020-10-29 / 2020-09-28
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


月やあらぬ春やむかしの春ならぬわが身ひとつはもとの身にして    業平

かなたなる海にむかひて
かしらあげさへづる鳥は

こぞの春この木の枝に
きて啼きし青鵐のとりか

かぐはしきこのくれなゐの
梅の花さけるしたかげ

これやこのこぞの長椅子
古りしままなほくちずして

こぞありしほとりに咲ける
はしきやしたんぽぽの花

宿をでてもの思ひつつ
ゆくりなくわが來しをかべ

あづさゆみ春の日ざしに
こぞの日のこぞのものみな

うつろはでありけるよあな
いにしへのうたのこころを

なかなかにわが身のみかは
おしなべて世はさながらに

さながらに
ものの
あはれや



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