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海から昇る太陽
うみからのぼるたいよう
作品ID54113
著者三好 達治
文字遣い旧字旧仮名
底本 「三好達治全集第一卷」 筑摩書房
1964(昭和39)年10月15日
入力者kompass
校正者杉浦鳥見
公開 / 更新2020-12-15 / 2020-11-27
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


ああ海から昇る太陽
太陽
今しののめの
藍と薔薇との混沌を
蹴破つて昇る太陽
かの紅の かのまるく大きなる
かの重たげなるもの
虚空のうちを押渡る
かのまぶしきもの
かの團々たる
黄金光の聖母胎
ああかの 今わが涙にまで
そのほのかなる暖かみもてもの言ひかくるもの
太陽
おお太陽
海から昇る太陽
われ永く
おん身の朝ごとにそこに在りて
かくまるく 大きく 赤く
われらが遊星の空高くはるばると
さし出で給ふを
不覺や
忘れてゐたりき
久しくも忘れてゐたりき
しかしてこの日
雲深き水平線を押昇る
何たる大いなる
何たる美しい太陽だらう
わがいとけなき
わがけがれなき日の
なほそこに今もあるかに
ああげにかくもまぶしく
海から昇る太陽
おお太陽
太陽



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