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![]() 「ちきゅうず」じょ |
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作品ID | 54168 |
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著者 | 太宰 治 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「太宰治全集11」 筑摩書房 1999(平成11)年3月25日 |
初出 | 「新潮 第三十二年第十二号」1935(昭和10)年12月1日 |
入力者 | 小林繁雄 |
校正者 | 阿部哲也 |
公開 / 更新 | 2012-03-03 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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「新潮」編輯者楢崎勤氏、私に命ずるに、「ちかごろ何か感想云々」を以てす。案ずるに、「ダス・ゲマイネ」の註釋などせよとの親切心より發せしお言葉ならむ。拙作「ダス・ゲマイネ」は、此の國のジヤアナリズムより、かつてなきほどの不當の冷遇を受け、私をして、言葉通ぜぬ國に在るが如き痛苦を嘗めしむ。舌を燒き、胸を焦がし、生命の限り、こんのかぎりの絶叫も、馬耳東風の有樣なれば、私に於いて、いまさらなんの感想ぞや。すなはち、左に「地球圖」と題する一篇の小品を默示するのみ。もとより、これは諷刺に非ず、格言に非ず、一篇のかなしき物語にすぎず、されど、わが若き二十代の讀者よ、諸君はこの物語讀了ののち、この國いまだ頑迷にして、よき通事ひとり、好學の白石ひとりなきことを覺悟せざるべからず。「われら血まなこの態になれば、彼等いよいよ笑ひさざめき、才子よ、化け物よ、もしくはピエロよ、と呼稱す。人は、けつして人を嘲ふべきものではないのだけれど。」