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森の生活――ウォールデン――
もりのせいかつ
副題02 森の生活――ウォールデン――
02 もりのせいかつ――ウォールデン――
原題WALDEN, OR LIFE IN THE WOODS
著者ソロー ヘンリー・デイビッド
翻訳者神吉 三郎
文字遣い新字新仮名
底本 「森の生活」 岩波文庫、岩波書店
1979(昭和54)年5月16日改版
入力者Cavediver
校正者砂場清隆
公開 / 更新2019-07-12 / 2019-06-28
長さの目安約 575 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

訳者のことば

 ソーロー Thoreau の『ウォールデン―森の生活』(Walden, or Life in the Woods)はアメリカの代表的古典の一つである。そのうちに盛られた精神は今日われわれの耳目にふれてつくられるアメリカという概念からはだいぶ懸けはなれているように見えるが、実はその基盤によこたわる大きな要素の一つであって、こういう要素を見落としてはわれわれのアメリカという概念には重大な欠陥がのこされるであろう。この書物はまた人類共通の古典である。このように自然と人事とを見、感じ、考え、生きた人の誠実で刻銘な記録は世界の人間の絶えざる反省と刺戟と慰めとの源であらねばならない。現代人は追いたてられるような足どりで、思いつめた眼つきでどこに往くつもりであろうか。われわれは「簡素な生活、高き想い」の実践者ソーローとともに sober(しらふ)になり、単純に考え、大地に足をつけた生き方をする必要がありはしないか。もちろん、彼の時代と環境とはわれわれのそれではなく、そのままの形で学ぶことはできないが。
 ソーローは一八四五年七月四日(米国独立祭の日)に自分の住んでいたコンコードの町から南方一マイル半のウォールデン池のほとりの森のなかの、自分の手で建てた小屋に移って二年と二カ月間独り暮しをした。『ウォールデン』はその生活報告である。内容は、その動機、どうしてその小屋を建てたか、畠作り、湖水と森の四季のうつりかわり、そのあたりの植物や動物の生態の描写、そこを訪れる、あるいはそこからソーローが出かけていった隣人たちの叙述、そういう静かな環境における読書と思索、その他、である。
 ソーローはこの二年あまりの独居のあいだに、先年兄のジョンとともに舟遊びしたときの記録『コンコード河とメリマック河の一週間』の原稿をまとめ――これは一八四九年に自費出版されたが、大部分しょい込みとなった――『ウォールデン』の原稿の大部分を書き、森を出てのちさらに筆を加えて一八五四年に世に問うたが、この方は相当よく売れた、そして著者の死後も年を逐うて真価をみとめられ、今ではアメリカ文学の古典の一つとしての地位を確立した。
 著者ソーローは禁欲的な求道者であるとともにたくましい享楽家である。彼の禁欲的な簡素な生活は十二分の享受のための前提であり準備である。彼が朝の清澄な気分をコーヒーや茶で不純にすることを欲せず、もちろん飲酒喫煙せず、肉食をさけて米や粗末なパンや木の実を好んで食べ、恋愛せず、家庭的覊絆をもたず、最小限の生活をささえる以上の肉体労働をしなかったのは、曇りのない眼と清純な感覚とをもって自然と人生の真趣を心ゆくばかり味わわんがためであった。が、彼は消極的に花鳥風月をたのしむ風流人ではなく、魚を釣り、水鳥を追いまわし、兎やリスに餌をやるまめな人間である。また湖水に測鉛を投じ、氷の厚さ…

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