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ごみだらけの豆
ごみだらけのまめ
作品ID54213
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 4」 講談社
1977(昭和52)年2月10日
初出「童話」1924(大正13)年9月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者へくしん
公開 / 更新2021-02-21 / 2021-01-27
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 地震のありました、すぐ後のことであります。町には、米や、豆や、麦などがなくなりました。それで、人々は、争って、すこしでも残っているのを買おうとしました。
 ある乾物屋では、こんなときにこそ、小舎をそうじして、平常落ちている豆や、小豆などを拾い集めて、売ってしまわなければならぬと思ったのです。主人や女房は、小舎の中をはいて、きれいに、落ちている豆や、小豆を一ところに集めました。それは、かなりたくさんな量があったのです。大きな器の中に入れて、店に出しておきました。
 美代子は、外から、家へ帰ると、
「お母さん、いま、町の一軒の乾物屋にたくさん白い豆がありましたから、早く、なくならないうちに買っておきましょう。」といいました。
 お母さんも、お父さんも、びっくりしたような顔つきをして、
「ほんとうに豆があったの。それは、なくならないうちに買っておいたほうがいい。はやく、おまえいって、二升ばかり買っておいでなさい。」と、お母さんはいわれました。
 美代子は、ふろしきを持って、いそいそと家から出ていったのです。その後で、お父さんと、お母さんとは、話をなさいました。
「よく豆がありましたこと。」
「なにを見てきたのか、いまごろそんなものがあろうはずがないさ。」
「だって、あの子が、見てきたのですもの、どこかからきたのでしょう。」
「どこかからきたのなら、その家一軒ばかりではないだろう。まあ、ほんとうに買ってくるか、もうすこしたてばわかる。」
 こんなふうに、お母さんと、お父さんとは話していられました。
 そのうちに、美代子は、重そうに、ふろしき包みを下げてもどってきました。
「あったかい。」と、お母さんはいわれました。
「なるほど、買ってきた。えらいものだ。」と、お父さんは、まず、その手柄をほめられました。
 しかし、美代子がふろしきを解いて、お父さんや、お母さんの目の前に、それを見せたとき、お母さんは、指さきで、豆を分けながら、
「まあ、たいへんにいろいろなくずがまじっているのだね。」と、目を円くなさいました。
 そして、見れば、見るほど、土がはいっていたり、わらがはいっていたりするので、お母さんは、あきれた顔つきをして、
「いくら、なんでも、この豆は、食べられそうもないね。」といわれました。
 お父さんも、黙って、見ていられましたが、せっかく買ってきた、美代子がかわいそうになって、そばから、
「なにも食べるものがなくなれば、そんなぜいたくなことがいっていられるものでない。けっこうだ。あちらに、しまっておけばいい。」と、お父さんはいわれたのです。
 美代子は、うっかりして、とんだ役にたたないものを買ってきたと後悔しました。そして、こんなものを黙って売った、乾物屋の不しんせつを思わずにいられませんでした。
「ほんとうに、あの人たちは、この際だからといって、だまって、こ…

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