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小さな金色の翼
ちいさなこんじきのつばさ
作品ID54216
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 4」 講談社
1977(昭和52)年2月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者へくしん
公開 / 更新2021-01-08 / 2020-12-27
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 彼らの群れから離れて、一羽の小鳥が空を飛んでいますと、いつしか、ひどい風になってきました。そして、小鳥は、いくら努力をしましても、その風のために吹き飛ばされてしまいました。
 空には、雲が乱れていました。方角もわからなくなってしまいました。小鳥は、ただ飛んでゆきさえすれば、そのうちに林が見えるだろう。また、山か、野原に出られるだろうと思っていました。
 日はだんだん暮れかかってきました。そして、雨さえ風にまじって降り出しました。小鳥は、ただ一思いに、ゆけるところまで飛ぼうと思ったのでありましたが、いまは疲れて、どこかに降りて、すこしの間休まなければならなかったのであります。小鳥は、高い空から舞い下りようとして、びっくりしました。なぜなら、真下には、ものすごい、大海原があったからです。いままで、雲にさえぎられて、自分はどこを飛んでいるのか見当すらもつかなかったのですけれど、この有り様を見て、小さな鳥の心臓は恐ろしさのために冷たくなってしまいました。
 どうしたらいいか、小鳥にはわからなかったのです。もはや、疲れた翼を休めることもできません。このうえは、力のつづくかぎり、この海を飛びきって、あちらに陸地を見いだすよりしかたがなかったのです。それで、小鳥は風と戦い、雨と戦って、飛んで、飛んで、飛びました。そのうちに、日は暮れてしまって、まったく、あたりは真っ暗になってしまったのでした。
 海のすさまじい鳴り音が、空にまでとどろいて聞こえました。いつやみそうもない暴風は、油断をすると、いまにも吹きつけて、この怖ろしい波のうず巻きの中へ、自分を突き落とそうとしました。哀れな小鳥は、どうなるだろうかと、生きている心地はありませんでした。
 みんなから、独りはぐれてしまうのでなかった。もし、自分がはぐれてしまわなかったら、急に風が出ても、こんなところへ吹き飛ばされるようなことはなかったろう……。そう思いますと、しきりに後悔されました。
 小鳥は、こんなに暗くなった、夜の空をかつて飛んだ経験をもっていませんでした。日が暮れるに、早くから、安全な深い森の中に降りて、木の枝に止まって眠りについたものです。
 しかし、こうなっては、過去のことを考えるのもむだなことでした。そして、すこしも気にゆるみをもつことができません。いつしか翼は破れ、呼吸も苦しくなり、もうこのうえは、なるがままに身をまかせるよりは、ほかになかったのであります。
 ちょうど、このとき、小鳥は、真っ暗な、そして猛り狂うすさまじい海のあちらから、一筋の明るい光の射すのを認めたのです。
 なんであろう? と、彼は、驚きもし、また喜びもしました。そして、急に、元気が出て、小鳥は、この明るい火を目当てに、いっしょうけんめいに雨と暴風の中を翔けてきたのでありました。
 その火は、近いようで、なかなか遠くでありました。だん…

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