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あるるかんの死
あるるかんのし |
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作品ID | 54347 |
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著者 | 森川 義信 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「増補 森川義信詩集」 国文社 1991(平成3)年1月10日 |
初出 | 「詩集」1941(昭和16)年7月 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | フクポー |
公開 / 更新 | 2017-10-11 / 2017-09-24 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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眠れ やはらかに青む化粧鏡のまへで
もはやおまへのために鼓動する音はなく
あの帽子の尖塔もしぼみ
煌めく七色の床は消えた
哀しく魂の溶けてゆくなかでは
とび歩く軽い足どりも
不意に身をひるがへすこともあるまい
にじんだ頬紅のほとりから血のいろが失せて
疲れのやうに羞んだまま
おまへは何も語らない
あるるかんよ
空しい喝采を想ひださぬがいい
いつまでも耳や肩にのこるものが
あつただらうか
眠るがいい
やはらかに青む化粧鏡のなかに
死んだおまへの姿を
誰かがぢつと見てゐるだらう