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冬の夜の歌
ふゆのよるのうた |
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作品ID | 54350 |
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著者 | 森川 義信 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「増補 森川義信詩集」 国文社 1991(平成3)年1月10日 |
初出 | 「早稲田派」 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | フクポー |
公開 / 更新 | 2017-12-20 / 2017-12-10 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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私は墜ちて行くのだ
破れた手風琴の挽歌におくられて
古びた天鵞絨の匂ひに噎び
黝い霧に深く包まれて
ゆふぐれの向ふへと私は墜ちて行くのだ
今はこの掌に触れた蒼空もなく
胸近く海のやうに揺れた歌声も――
どうしたのだ私の愛した小さくて美しかつたものよ
小鳥たちよ 草花たちよ 新月よ 青い林檎よ
しきりに眩暈がおしよせる心には
悔恨が一本の太い水脈となり――
陰鬱な不協和音が青く戦き
狂つたヴイオロンが駈け廻り
すべては白蝋石の上に痙攣し
腐蝕した玻璃の破片が暗黒の空間に飛散するのだ
ああ 遂に今 若い肋骨さへ噛み穿つ
寒々と冴えた牙の戦慄よ