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歌のない歌
うたのないうた
副題《夕暮に》
《ゆうぐれに》
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「増補 森川義信詩集」 国文社
1991(平成3)年1月10日
初出「ル・バル 18輯」1938(昭和13)年11月30日
入力者坂本真一
校正者フクポー
公開 / 更新2018-08-13 / 2018-09-24
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


この傾斜では
お伽話はやめて
こはれたオペラグラスで
アラベスク風な雨をごらん
ひととき鳩が白い耳を洗ふと
シガーのやうに雲が降りて来て
ぼくの影を踏みつけてゐる
光のレエスのシヤボンの泡のやうに
静かに古い楽器はなり止む
そして…………
隕石の描く半円形のあたりで
それはスパアクするカアブする
匂ひの向ふに花がこぼれる
優しい硝子罎の中では
ひねくれた愛情のやうに
ぼくがなくした時刻をかみしめる
ぼくはぼくの歌を忘れてゐる



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