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秋の一夕
あきのいっせき
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会
1991(平成3)年6月6日
入力者坂本真一
校正者フクポー
公開 / 更新2018-09-29 / 2018-08-28
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


あゝ終の夕は来りぬ、
天昏に地昏にさはなる
不浄はもこゝに亡ぶか、
洗礼女――河原の葦に
法涙の露無量光、
新らしき生命の慈相――

十夜法会の跡さびしき、
天台の寺院の堂に、
いからしく波うつ霧や、
仏龕の虫ばむ音は、
悲しとも、これも自然が
法の座へ辿る足音ぞ、
きけ葦のさなす小琴に、
霊のうた『血汐は白し
血は白し、こや敬虔の
古瓶の封を破らず
時をまち考え伏して
いまぞいま『自然』に浸す、

白き血に映れ大天、
白き血を吸へや大地
ありとある孤独のものは
静寂の法に帰依して
黙しつゝ白き血飲め』と、
きくからに身も溶けごゝち。

見かへれば喬木のしげみ
天台の寺院は闇に――
うなだれて物思ひ立てる
己が身も小河も葦も
大法の一切滅に
あゝなべて見えざる光輝――



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