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秋の一夕
あきのいっせき |
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作品ID | 54494 |
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著者 | 末吉 安持 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会 1991(平成3)年6月6日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | フクポー |
公開 / 更新 | 2018-09-29 / 2018-08-28 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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あゝ終の夕は来りぬ、
天昏に地昏にさはなる
不浄はもこゝに亡ぶか、
洗礼女――河原の葦に
法涙の露無量光、
新らしき生命の慈相――
十夜法会の跡さびしき、
天台の寺院の堂に、
いからしく波うつ霧や、
仏龕の虫ばむ音は、
悲しとも、これも自然が
法の座へ辿る足音ぞ、
きけ葦のさなす小琴に、
霊のうた『血汐は白し
血は白し、こや敬虔の
古瓶の封を破らず
時をまち考え伏して
いまぞいま『自然』に浸す、
白き血に映れ大天、
白き血を吸へや大地
ありとある孤独のものは
静寂の法に帰依して
黙しつゝ白き血飲め』と、
きくからに身も溶けごゝち。
見かへれば喬木のしげみ
天台の寺院は闇に――
うなだれて物思ひ立てる
己が身も小河も葦も
大法の一切滅に
あゝなべて見えざる光輝――