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茴香
ういきょう |
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作品ID | 54496 |
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著者 | 末吉 安持 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会 1991(平成3)年6月6日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | フクポー |
公開 / 更新 | 2018-06-03 / 2018-05-27 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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なが月下浣の日のゆふべ、
山下岩根垂る水の
玉のしづくに核ぐみて、
かつ熟みこぼし斎ひつゝ、
風に額づく茴香の
あゝ姉妹の二人もとよ。
化石もすらむ秋の木は
骨立ち強に呼吸つまり、
天つ御法のおん宣告に、
拗ねては、櫨も葉こそ縒れ、
孕婦ながら茴香は
優婆夷か、悩む色もなし
伴にはぐれし赤蟻の
飢ゑて足悩ゆむ湿り地に、
憐み顔のおとどひは
茎[#ルビの「くも」はママ]も軟らに額づきて、
手弱腕にそと乗せつ、
弘誓もさこそ、あゝ茴香。