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おもひで
おもいで
作品ID54499
著者末吉 安持
文字遣い新字旧仮名
底本 「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会
1991(平成3)年6月6日
入力者坂本真一
校正者フクポー
公開 / 更新2018-11-06 / 2018-10-24
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


父ぎみはしはぶき二つ、
母ぎみはそよ一雫、
瀬戸の海、東をさしし
三日まへに我を見ましぬ。

世馴れざる野がくれわらべ、
手文筥を封じもあへず、
ゐざり出て閾の端の
柱抱き面かくしぬ。

いとほしや小き学生
いくとせを東の京の
旅に寝ね旅にねざめて
文のわざいそしまむとや。

口軽く胸冷やけき
旅館女の待遇ぶりに、
慨きては、雨の夕の
欄に、おゝ、何のおもひで。

いとほし、と涙もろに、
叔母ぎみは守袋を
てづからにやさしうかけて、
わが背をそと撫でましぬ。

をりから車気近う、
婢女、荷をとゝのふれば、
父ぎみはいとおごそかに
健なれ、とそれよ一言。

母ぎみよ乳母よ叔母ぎみ、
朝露に五町濡れ来て
さらばよの御声ごえや、
やわらかにその尾をいきて
野の鶏の声も流れつ。



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