えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
楽天Kobo表紙検索
坂
さか |
|
作品ID | 54512 |
---|---|
著者 | 末吉 安持 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会 1991(平成3)年6月6日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | フクポー |
公開 / 更新 | 2018-06-30 / 2018-05-27 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
広告
広告
神無月、日は淡々と
夕ぐれの雲ににほへば、
眼路ひくき彼方に薄れ
あはれなる遠樹ぞ見ゆる。
畦をゆく斑の牛と
黄牛は声も慵く、
今は皆刑の場に
皮剥がれ紅く伏しなむ、
かく思ひ定めし如く
とぼとぼと霧にまぎれぬ。
素枯野のあなた、沼尻の、
荻すすき折れ伏す所、
ああ如何に髑髏を洗ふ
冬の水音して落ちむ。
ひえひえと身に泌む寒さ、
われは今いづこ歩むや、
ふと思ふ、ああ人の世も
ここにして終極にかあらむ。
下り坂をぐらくなりて
見るかぎり煙うづまく。