えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
楽天Kobo表紙検索
拾った詩
ひろったし |
|
作品ID | 54524 |
---|---|
副題 | ――或る人に告ぐる―― ――あるひとにつぐる―― |
著者 | 今野 大力 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「今野大力作品集」 新日本出版社 1995(平成7)年6月30日 |
初出 | 「旭川新聞」1923(大正12)年8月5日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2015-10-23 / 2015-09-01 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
広告
広告
なぜか知ら
そぞろ歩みに誘われて
私もお祭りに加わります
誰ひとり街はずれのお宮へなぞゆくものですか
みんなはこうして
涼しい夏の夜の風を浴びながら
当どもなく華やかな灯の下を
さまよいます。
*
師団道路なんて
何て無意味な名前でしょう
面白可笑な人にもあい
一寸横丁へよれてごらん
音もない光りもない
夜半の神秘がねています。
未来派ならば
何と表現するでしょう
女、首、しな、ひとみ、赤坊
男、香水、めがね、煙草
花電気、太鼓、かね、笛
笑いましょうか
唄いましょうか
泣きましょうか
*
祭りはまちに燃えるのろしです
一団高く、一年に一度の
天にまけよかし見よかしと
祈る一つの灯です。
*
あららっこれはしまった
あれが誰ですあの人でなくって
そうだねこれはしまった
さよならやあおや
何の真似でもせなけりゃならぬ
私の顔が疲れたろう
まちを歩けばこんなにも
おぼえた人がいるのです
そうして忘れているのです
*
やぶ屋敷、活動人形、軽業師
見せ物からくり
ごっちゃごちゃ
まぜてかえてゆきましょうか
すりが鋏を持っていましょう
*
灯のまちの尊さは
どんな処にあるか知ら
屹度お宮にあるんだろう
天の岩戸の踊りなら
神様さえもそろそろと
扉を開いて来ましょうよ
*
忘れていましたお祭りは
商人が金をもうける手段です