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砂上の低唱
さじょうのていしょう
作品ID54545
著者漢那 浪笛
文字遣い新字旧仮名
底本 「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会
1991(平成3)年6月6日
初出「琉球新報」1908(明治41)年10月12日
入力者坂本真一
校正者良本典代
公開 / 更新2016-07-10 / 2016-06-10
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


満つと見しこの天地は足ずありぬ心を
いづちやるも空虚のみ
海の香しめる暁を
今日片時の浜下り
磯の霞に酔ひしれて
哀れ吾が世の夢に泣く

浪路逢かた見渡たして
満潮時を恨み泣く
千鳥の声に胸冷えて
哀れ吾が世の夢に泣く

花葉かざれる海の底
そや湧きかへる黒潮は
憂しや吾が身の宿世にて
哀れ吾が世の夢に泣く

足跡しげき砂の上
深かき想ひに眼を閉ちて
世の運命を思へば
哀れ吾が世の夢に泣く

悲哀の盃を受けし身は
日に日に琴柱折りふして
只だ空鳴りに物狂ひ
哀れ吾が世の夢に泣く

さらばと詩の神を追ひ
花園の影に身をよせて
詩の車を手に繰るも
哀れ吾が世の夢に泣く



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