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哀詩数篇
あいしすうへん
作品ID54556
著者漢那 浪笛
文字遣い新字旧仮名
底本 「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会
1991(平成3)年6月6日
初出くらがり「琉球新報」1909(明治42)年5月6日<br>暮の鐘「琉球新報」1909(明治42)年5月6日
入力者坂本真一
校正者良本典代
公開 / 更新2017-08-06 / 2017-07-17
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


くらがり
なすによしなき哀れさよ、
早や日数経て、今日の日も
暗がりわたる物おもひ。

水や空なる波の上に、
淋しくかゝる綾雲は、
やがて消ゆべき希望かや。

その希望もて吾が道は、
深海の底の青貝の、
螺線の中のゆきもどり。

物の幾度□貝□葉に、
灰色なせる涙もて、
悲哀の文字を印せしも、

暗き深みのみなぞこの、
声も言葉もかよわねば、
昨日も今日も、かくて暮れゆく。


暮の鐘
灰色の雲かさなりて、
黄昏は死人のけわひ。
しく/\と泣きいる風は、
谷隈の底をはひ出で、
黄ばみたる木立はらひぬ。

冷やかな自然よ君と、
今日も又、かくて暮れゆく、
哀音の鐘の響きは、
痛みたる君が胸より、
傷た振るる、苦患の声か。

うなだるる眼ひらきて
黄昏の空を仰げば
奥津城の岩のほとりの、
小山なす屍の上に、
胸もどき声をきゝしる。



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