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夜汽車の中で
よぎしゃのなかで |
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作品ID | 54819 |
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著者 | 竹内 浩三 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻」 藤原書店 2001(平成13)年11月30日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 雪森 |
公開 / 更新 | 2014-12-06 / 2014-11-14 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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ふみきりのシグナルが一月の雨にぬれて
ボクは上りの終列車を見て
柄もりの水が手につめたく
かなしいような気になって
なきたいような気になって
わびしいような気になって
それでも ためいきも なみだも出ず
ちょうど 風船玉が かなしんだみたい
自分が世界で一番不実な男のような気がし
自分が世界で一番いくじなしのような気がし
それに それがすこしもはずかしいと思えず
とほうにくれて雨足を見たら
いくぶんセンチメンタルになって
涙でもでるだろう
そしたらすこしはたのしいだろうが
そのなみだすら出ず
こまりました
こまりました