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尚白箚記
しょうはくさっき
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「西周哲學著作集」 岩波書店
1933(昭和8)年10月20日
入力者岩澤秀紀
校正者フクポー
公開 / 更新2018-03-07 / 2018-02-25
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 凡そ百科の學術に於ては、統一の觀有る事緊要たる可し。學術上に於て統一の觀立ては、人間の事業も緒に就き、社會の秩序も自ら定まるに至るべし。誠に人間各自の事業も緒に就きて、社會の秩序も定まり、苟も紊亂する事無れば、其結果は即康寧なる可し。是に努力(勉勵)の一元を加ふれば、其結果は家國天下の富強ぞかし。此康寧と富強との二元流行して、所謂生を養ひ死を喪し、人皆熈々として壽考の域に躋るは即福祉にして、福祉は人道の極功なり。故に福祉の極功に達せんと欲すれば、先百科の學術に於て統一の觀を立て、各自に其精微の極に臻る事より始まるなり。是學者分上の事業なり。其以上は作業者の事業にて、學者の事には非らず。然るに此學者分上の事業の中にも、統一の觀を立つると學術の精微を究むるとは亦分業の法二區の觀にて、一人の能く兼ね得る所に非らず。故に統一の觀を立つるは哲學家の論究す可き所と爲、學術の精微を究むるは各科の學術を專攻する者に存する也。
 墺居斯多・坤度嘗て五學の模範を著はし、天上理學(天文學)、地上理學(格物學、化學)、生體學(バイオロジー)、社會學(ソシオロジー)と爲す。是現象の最概通單純なる者より最特別組織せる者まで、其理法の度に準じて定めたる者なれば、近世の諸名家も亦之を取れりと見ゆ。然れども余は未だ其生理と性理との相連結するの理趣を講明して、發見するの力に乏しければ、姑く心理と物理とを兩種と爲して之を説き、唯事業上に就きて其統轄隷屬する關係を説かんと爲。
 心物兩理に分ちて説く前に、一口言ふ可き事有り。是理と言ふ辭の定義即理の本體なる者は如何と言ふ事也。其字は支那の古來よりの字にて、儒書は皆理を論じたる者也。中にも易の易象、易數の理など、中庸の中和の理、上天無聲無臭贊歎の理など、皆高妙なる理の説き法也。然れども理の字を用ゐたるは易の繋辭に「易簡而天下之理得」と説、卦に「窮理盡性以至于命」と二個所の用法並に孟子に「理義之悦我猶芻豢之悦我口」等にて、條理文理などの用法の外は多く見えず。唯宋儒以來は殊に此字を用うる事多く、理を解明する事も精密に至りたり。大學の補傳は易の字を取りて格物致知の義を説きたりと雖へども、宋儒の理の字の定義は是にて分明なり。元來説文の治玉の義にて、其れより脉理、條理、※[#「勝」の「力」に代えて「夭」、6-8]理、文理等に轉じ、其組織の整然條理有りて紊れざる事を指したる者なるを、又一轉して道理と云ふ尋常の觀念を徴する語と成り、今は此一字なれば專ら此觀念を示すなり。本邦の語にては「コトワリ」と訓ず。是「事分リ」または「言分リ」の義なる可く、孰れにても通ず。又「ハズ」と言ふ言有り。「發途」の漢語には非れども其意なり。矢の筈も同じ心にて、依りて以て處觀にては方向を定め、時觀にては遲速を定むる機の存する所を指すなり。故に機力發動を用言にて「ハヅム」と言ひ、其名言に…

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