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![]() みなとにしずんだてっぺんのきぼう |
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作品ID | 55011 |
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著者 | 仲村 渠 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会 1991(平成3)年6月6日 |
入力者 | 坂本真一 |
校正者 | 良本典代 |
公開 / 更新 | 2016-12-04 / 2016-12-09 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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浚渫船はいづこの海を浚つてゐるのだらう
鉄片は沈んで沈んで港の底
眇の眸を覗かせるよ
ああ気なげな空想を抱いてゐるぞ
ねそべつた比目魚が吐きだす泡にぶらさがり
ゆらゆら海面に昇つてゆく鉄片の願望よ
おをい!
海上遠く、青空映す友だちよ
針魚よりも鋭い腰の短剣め!
あいつの主人はランチを飛ばして海軍大尉の美男子だ
浮標めの自由な展望よ
あいつは海と空の骰子だ
あいつは燈台の横腹にさしこむ朝日の第一線にも見あきてゐよう
港外を素通りする外国汽船ののつぽな煙筒
出帆を敲く銅鑼めの得意な面つきよ
あいつの面に照り反す海
空
太陽よ
麝香。白粉。ワキガの花粉を吹飛ばす
突堤に乱れるパラソルの花園!
輝きつゞく港街は晴天の祭日だ
帝国銀行の高楼を積上げるつみあげる
起重機の妖しい肘よ
混血児
人力車
タバコ
避電針
アンテナ
気象台
煙
鳥
雲
飛行機
飛行機の両翼を凛乎と張る細い針金よ
岬遠い避病院の塀ぎはに転つた哀しい空鑵
あ、あ、潰れた空鑵にだつて落日が光る光る
ぼくは嗅ぎたいよ
日光が嗅ぎたいよ
あつたかい鴎の糞がたべたいよ