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不可能
ふかのう |
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作品ID | 55195 |
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著者 | ヴェルハーレン エミール Ⓦ |
翻訳者 | 上田 敏 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「上田敏全訳詩集」 岩波文庫、岩波書店 1962(昭和37)年12月16日 |
初出 | 「朱欒 創刊号」1911(明治44)年11月 |
入力者 | 川山隆 |
校正者 | 成宮佐知子 |
公開 / 更新 | 2012-12-06 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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人よ、攀ぢ難いあの山がいかに高いとも、
飛躍の念さへ切ならば、
恐れるなかれ不可能の、
金の駿馬をせめたてよ。
登れなほ高く、なほ遠く。たとひ賢しらに
なんぢが心、山腹の
泉のそばを慕ふとも、
悦はすべて飛躍である。
途のなかばにとまる者は、やがて途に迷ふ。
かつは苦みかつ悶え
錯ち怒ることあつて
燃立つ心に命がある。
きのふの目標、あすの日は途の障礙ぞ、
籠の戸いかに固いとも、
思想はたえず相尅し
とはに盡きぬはその饑渇。
變化あれよ、向上あれとは、この世の大法、
不動の今がいかにして、
現世の榮を引き[#挿絵]はす
大コムパスの支點となる。
過ぎし世の智慧といふもの何の益かある、
授くるものは梭櫚の葉の
危なげも無い勝利のみ。
これを越えて飛べ、熱烈の夢。
人苟も飛躍せば、たえず己に超越せよ。
われとおのれに驚けよ、
頭果してこの熱に、
堪へるか否かを問ふ勿れ。
不斷の慾のたえまない人の心を、
攀ぢ難い山の上から、ましぐらに、
未來めがけて不可能の、
金の駿馬は推し上げる。