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白鳥
はくちょう
原題LE VIERGE
著者
翻訳者上田 敏
文字遣い旧字旧仮名
底本 「上田敏全訳詩集」 岩波文庫、岩波書店
1962(昭和37)年12月16日
初出「三田文学 六ノ一二」1915(大正4)年12月
入力者川山隆
校正者岡村和彦
公開 / 更新2012-12-30 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


純潔にして生氣あり、はた美はしき「けふ」の日よ、
勢猛き鼓翼の一搏に碎き裂くべきか、
かの無慈悲なる湖水の厚氷、
飛び去りえざりける羽影の透きて見ゆるその厚氷を。

この時、白鳥は過ぎし日をおもひめぐらしぬ。
さしも榮多かりしわが世のなれる果の身は、
今こゝを脱れむ術も無し、まことの命ある天上のことわざを
歌はざりし咎か、實なき冬の日にも愁は照りしかど。

かつて、みそらの榮を忘じたる科によりて、
永く負されたる白妙の苦悶より白鳥の
頸は脱れつべし、地、その翼を放たじ。

徒にその清き光をこゝに託したる影ばかりの身よ、
已むなくて、白眼に世を見下げたる冷き夢の中に住して、
益も無き流竄の日に白鳥はたゞ侮蔑の衣を纏ふ。



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