えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
楽天Kobo表紙検索
|  サバトの門立 サバトのかどたち | |
| 作品ID | 55206 | 
|---|---|
| 原題 | DEPART POUR LE SABBAT | 
| 著者 | ベルトラン ルイ Ⓦ | 
| 翻訳者 | 上田 敏 Ⓦ | 
| 文字遣い | 旧字旧仮名 | 
| 底本 | 「上田敏全訳詩集」 岩波文庫、岩波書店 1962(昭和37)年12月16日 | 
| 初出 | 「アルス 二号」1915(大正4)年5月 | 
| 入力者 | 川山隆 | 
| 校正者 | 岡村和彦 | 
| 公開 / 更新 | 2012-12-12 / 2014-09-16 | 
| 長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) | 
広告
広告
女は夜半に起きて燭を點じ泥を取つて身に塗り、さて呪文を唱ふれば、身たちどころにサバトの集會に向ふ。
ジァン・ボダン「方士鬼に憑かるる事」
 羹を吸ふもの十二人、各の手にある匙は亡者の前腕の骨である。
 炭火は赤く爐に燃え、燭は煙つてだらだらと蝋を流し、皿の中からは春さきの溝のやうな臭が立つ。
 マリバスが笑つたり、泣いたりすると、破[#挿絵]オロンの三筋の絲を弓で扱くやうな唸が聞える。
 然し一人の兵隊はそら恐しい事だが、机の上に蝋燭を立てて魔法の書を開け廣げた。本の上には火に迷つて來た蟲が跳ねてる。
 此蟲が飛び跳ねてゐる最中、毛むくじやらの脹れた腹の處から、蜘蛛が出て來て、幻術の書の邊を這つて行く。
 而も此時方士も魔女も既に煙突から飛び出してゐたのだ。或は箒木、或は火ばさみに跨り、そしてマリバスは揚鍋の柄に乘つて出ていつた。